胎盤のNAD+低下が出産のタイミングを決定する「生体時計」として機能することを示した論文へのコメンタリーがScience誌に掲載されました。
- IRPA 事務局

- 1 日前
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2026年6月11日、一般社団法人プロダクティブ・エイジング研究機構(IRPA)の吉岡潔志主任研究員と今井眞一郎代表理事による解説記事(Perspective)が、科学誌『Science』に掲載されました。
本稿は、同誌の同号に掲載されたCiampaらによる最新の研究成果の論文をきっかけに、生物の老化制御に関する新たなパラダイムを提示するものです。
<本文>
生命力の「通貨」とも称されるNAD+(Nicotinamide adenine dinucleotide)は、加齢に伴い全身で減少することが知られています。当該分野のこれまでの定説では、このNAD+の低下は進行性の生理機能喪失を引き起こす「組織疲弊や老化の原因」と考えられてきました。しかし、Ciampaらの研究は、妊娠末期に胎盤のNAD+が急激に低下することが、出産のタイミングを決定する生理学的な「時計」として機能していることを明らかにしました。
今回の解説記事では、この発見が持つより広範な意義について論じています。胎盤という臓器が役目を終えるときにみられるNAD+代謝の低下が、次の新しい生命誕生のために精密に仕組まれた「マスター・スイッチ」として働いているという新たな概念を解説しています。吉岡主任研究員と今井代表理事は、哺乳類における全身性のNAD+代謝制御が支える臓器間コミュニケーションと、老化・寿命制御のメカニズムを統合的に説明する「NAD World 3.0」の概念に基づき、個体を老化させるNAD+の低下という現象が、胎盤という一過性の臓器の寿命を計画的に終えるメカニズムとして利用されている可能性を提唱しました。
Ciampaらの研究では、前駆体補給によるNAD+代謝の改善が早産を予防することをマウスにおいて証明しており、ヒトへの応用も期待されます。
論文情報
• 表題: The placental metabolic clock
• 著者: Kiyoshi Yoshioka and Shin-ichiro Imai
• 掲載誌: Science 392 (6803)
• DOI: 10.1126/science.aei4119
