top of page
検索

胎盤のNAD+低下が出産のタイミングを決定する「生体時計」として機能することを示した論文へのコメンタリーがScience誌に掲載されました。

  • 執筆者の写真: IRPA 事務局
    IRPA 事務局
  • 6月16日
  • 読了時間: 2分

更新日:7月23日

2026年6月11日、一般社団法人プロダクティブ・エイジング研究機構(IRPA)の吉岡潔志主任研究員と今井眞一郎代表理事による解説記事(Perspective)が、科学誌『Science』に掲載されました。

本稿は、同誌の同号に掲載されたCiampaらによる最新の研究成果の論文をきっかけに、生物の老化制御に関する新たなパラダイムを提示するものです。

 

生命力の「通貨」とも称されるNAD+(Nicotinamide adenine dinucleotide)は、加齢に伴い全身で減少することが知られています。当該分野のこれまでの定説では、このNAD+の低下は進行性の生理機能喪失を引き起こす「組織疲弊や老化の原因」と考えられてきました。しかし、Ciampaらの研究は、妊娠末期に胎盤のNAD+が急激に低下することが、出産のタイミングを決定する生理学的な「時計」として機能していることを明らかにしました。

今回の解説記事では、この発見が持つより広範な意義について論じています。胎盤という臓器が役目を終えるときにみられるNAD+代謝の低下が、次の新しい生命誕生のために精密に仕組まれた「マスター・スイッチ」として働いているという新たな概念を解説しています。吉岡主任研究員と今井代表理事は、哺乳類における全身性のNAD+代謝制御が支える臓器間コミュニケーションと、老化・寿命制御のメカニズムを統合的に説明する「NAD World 3.0」の概念に基づき、個体を老化させるNAD+の低下という現象が、胎盤という一過性の臓器の寿命を計画的に終えるメカニズムとして利用されている可能性を提唱しました。

Ciampaらの研究では、前駆体補給によるNAD+代謝の改善が早産を予防することをマウスにおいて証明しており、ヒトへの応用も期待されます。

 

論文情報

• 表題: The placental metabolic clock

• 著者: Kiyoshi Yoshioka and Shin-ichiro Imai

• 掲載誌: Science 392 (6803)

• DOI: 10.1126/science.aei4119

 
 

最新記事

すべて表示
【研究活動】当機構の吉岡潔志主任研究員が、「第11回 NCGGサマーリサーチセミナー」にて理事長賞を受賞しました。

2026年8月20日に国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター(NCGG)で開催された「第11回 NCGGサマーリサーチセミナー」において、当機構の吉岡潔志主任研究員による研究発表が理事長賞を受賞しました。 本セミナーは、センター内における研究活動の発表を通じて職員の交流を促進することを目的として開催され、52件の研究課題についてポスター発表が行われました。 理事長賞は、ポスターの見やすさ・わか

 
 
IRPAと湧永製薬(株)の共同研究論文が「Cell Metabolism」誌の「Most read (last 30 days)」に選出されました。

IRPAと湧永製薬株式会社による共同研究論文が、国際学術誌『Cell Metabolism』において、直近30日間で最も読まれた論文となりました。 熟成ニンニク抽出液由来成分「S1PC」の抗老化作用と、「脂肪―脳―筋肉」を結ぶ新たな臓器間コミュニケーションを明らかにした研究成果に、世界的な関心が寄せられています。 論文は、S1PCが脂肪組織からのeNAMPT分泌を促進し、視床下部を介して加齢に伴う

 
 
【研究活動】当機構の吉岡潔志主任研究員による研究課題が、JSPS科研費「挑戦的研究(萌芽)」に採択されました。―新たな骨格筋間コミュニケーションの解明へ―

一般社団法人プロダクティブ・エイジング研究機構(以下、当機構)の主任研究員である吉岡潔志が、共同研究先である国立研究開発法人国立長寿医療研究センターの外来研究員として申請した研究課題が、独立行政法人日本学術振興会(JSPS)による科学研究費助成事業「挑戦的研究(萌芽)」に採択されました。 本研究によって得られる成果は、骨格筋が全身の組織と連携して機能を維持する仕組みや、運動によって引き起こされる全

 
 
bottom of page